2018年10月7日 フォアフット走法で有名な大迫傑(おおさこすぐる)選手がシカゴ・マラソンで日本新記録を出しました。記録は2時間5分50秒。(結果は3位。トップとの差はわずか39秒でした。)。
大迫傑選手の活躍により、フォアフット走法が注目されています。
しかし、フォアフット走法でふくらはぎを痛めるケースがよくあります。
その原因と効果的なトレーニング方法についてお伝えします。
ふくらはぎの痛みはアキレス健や筋肉(筋腱複合体)の痛み
ふくらはぎ= 腓腹筋(速筋)+ヒラメ筋(遅筋) +アキレス腱
「ふくらはぎ」は筋肉と腱が複合してできています。
フォアフット走法では、ホッピング理論に基づいて走るため、正しいフォームで着地をしないと、アキレス腱に炎症を起こしたり、腓腹筋やヒラメ筋の疲労が原因で痛みが起こります。
ホッピング理論とは
→フォアフット部分での着地によりアキレス腱が引き伸ばされる
→引き伸ばされたアキレス腱は縮む。
こうした、「バネの力」を利用して走る理論です。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
スロージョギングでのフォアフット着地!ふくらはぎが太くなる理由
フォアフット走法のコツ
大迫傑選手はTV番組のインタビューの中でフォアフット走法のコツについて次のように述べています。
「うまく(体重を)乗せる感じ」
「乗せると反発がすごくあるので」
「反発でポーンと前に出るかんじ」
かかとから着地するのではなく、フォアフット部分で着地をすることにより、反発力が得られます。
かかとが上がった状態でフォアフット着地をすると、アキレス腱が引き伸ばされます。アキレス腱が伸ばされると腓腹筋が引き伸ばされ、引き伸ばされた腓腹筋は縮もうとします。(強制伸長反射)
大迫傑選手はこうしたアキレス腱の伸長や腓腹筋の伸長・収縮の作用を
「ポーンと前にでる感じ」と言っています。
大迫傑選手とフォアフット走法の出会い
大迫傑選手のフォアフット走法は中学時代のトレーニングから身についたものでした。
大迫傑選手の中学時代のトレーニング方法
大迫傑選手は、中学時代に「つま先で着地」→「もも上げを繰り返す」
短距離選手が行うトレーニングを繰り返していました。
陸上部顧問だった山口智美先生は次のように述べています。
「毎日ウォーミングアップの一環として長距離も短距離も」
「早く次の足を着けるようにした方が良い」
つまり、大迫傑選手は中学時代には、ウォーミングアップで短距離選手が行うフォアフット走法を練習していました。長距離選手としてのランニングも自然とフォアフット走法となりました。
大迫傑選手はフォアフット走法の土台を中学時代につくり、高校でさらに磨きをかけました。
自分のフォームを意識する
大迫傑選手はフォアフット走法に関して次のように言っています。
「フォアフットは特に意識していない」
「それよりも自分のフォームを意識する」
これは、『フォアフット走法であるかを気にするのではなく、自分が身につけたランニングフォームで走り続けることができるかどうかが大事である』ということです。
こうした意識が日本を飛び出し、より良い環境を求めてアメリカへ渡った大迫傑選手の行動力の源(みなもと)になっています。
ナイキ・オレゴンプロジェクトに参加
2015年、大迫傑選手はナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加します。
ナイキ・オレゴン・プロジェクトはナイキ社によって設立されたプロ・ランナー集団です。世界トップレベルのランナーたちが集まり最新のトレーニング理論に基づいた練習を行っています。
体幹トレーニングでランニングフォームを安定させる
大迫傑選手の走りは
フォアフットによる大きな推進力がある反面、レース後半になると足だけが先行した走りとなり、上半身がついていけず、上下のバランスを崩すといった課題がありました。
早稲田大学時代のトレーナーだった近藤範晴氏は次のように述べています。
「足だけが前に行ってしまう」
「前腿(まえもも)が疲れて使えなくなって」
「ふくらはぎで(余計に)蹴るパターンを作る」
「ふくらはぎ周りになにがしらの問題が出ることが多かった」
下半身が先行することで、上体とのバランスが崩れ、そうした状態でフォアフット走法を続けると「ふくらはぎ」に負担がかかるのです。
大腿四頭筋の疲労がふくらはぎ周りを痛める原因
大迫傑選手は上体がブレることで 前腿(大腿四頭筋)が疲労 ふくらはぎへ負担がかかる走りとなっていました。
上体がぶれない走りをナイキ・オレゴンプロジェクトへ参加し、体幹部を強化するトレーニングで得ることができました。
ふくらはぎを傷めないための体幹部トレーニング方法
ナイキ・オレゴンプロジェクトのコーチ、デビッド・マッケンリー氏が公開している体幹トレーニング方法を紹介します。
The Oregon Project Stability Routine – Therapeutic Associates Physical Therapyより
以下の8種類のトレーニング方法を組み合わせて週に3~4回行うことで体幹部が強化されます。
1.ホットサルサ
(1)肩幅に立ち、左足を曲げ腿の高さまで上げます。ボールを胸の前で持った状態で静止します。
(2)上げた左足をできるだけ伸ばして、着地します。
(3)手を前にできるだけ伸ばし地面にボールを置きます。
(4)進行方向に向かって姿勢はできるだけ、まっすぐにします。
(5)後ろ足(右足)を持ち上げ(1)の姿勢になります。このときボールは腕を伸ばして頭の上で保持します。
それぞれの側で5回、計10回繰り返します。
2.ランナープル
チューブトレーニングです。
固定されたリング付きチューブを引っ張ります。
- 左手でリングを持ちます。左足を曲げ、腿の高さまで上げ姿勢を保持します。
- 上体を前に倒し、同時に左足を後方へ伸ばします。
- 再び(1)の状態へ戻ります。
- (1)の状態を保持したまま、左手でチューブを引きます。
(1)~(4)を片側15回繰り返します。合計30回行います。
3.サイドプランク(膝から胸)
(1)左肘を曲げ、地面につけます。そのまま両足を伸ばします。体を横にして姿勢を保持します。左肘着地部分と足先以外は地面から離します。
(2)上側になった右足をゆっくり曲げ、腰の位置で静止します。
(3)ゆっくりと右足を元の位置に戻します。
(1)~(3)を12回 行います。右肘を下にした側も12回行います。
4.リバースクラムシェル
チューブトレーニングです。
- 両足首にチューブを装着します。左腕を枕に、横向きの姿勢を取ります。右手は腰に当てます。
- その姿勢で両膝を直角に曲げます。膝はつけずに拳一個分の空間を開けます。
- 右足をゆっくりとあげます。
(1)~(3)を15~20回行います。両側を1~2セット行います。
5.クラムシェル
(1)両膝にチューブを装着します。左腕を枕に、横向きの姿勢を取ります。
(2)膝を広げるように、右足をゆっくり上に挙げます。
(1)~(2)を15~20回行います。両側を1~2セット行います。
6.マウンテンクライバー
バランスボールを使用したトレーニングです。
- 直径50cm程度の中くらいの大きさのバランスボールに両肘を曲げて置きます。両足を支点にして足を伸ばします。両肘と足先以外は地面より話します。背中を曲げずにまっすぐな姿勢を保持します。
- 左足を胸に引きつけるように上げ、体軸との角度を90度にします。足を元に戻します
- 続いて右足を胸に引き付けるように上げ、体軸との角度を90度にします。足を元に戻します。
(1)~(3)を20~30回行います。
7.ランナータッチ
(1)左足を上げたランニング姿勢を取ります。
(2)左足を後ろに伸ばすと同時に、体を前に倒します。左足を地面につけないようにします。膝の動きが体の正中線に沿ってまっすぐになるようにします。
(3)(2)の状態で左手を地面につけます。1~2秒間静止します。
(4)(1)の状態に戻ります。
右足も同様にトレーニングします。
片側8~10回です。1~2セット行います。
※負荷の高いトレーニングです。(上級者向け)
8.ジェーン・フォンダ
(1)左手を枕に横向きに寝る姿勢を取ります。右手は腰の位置に当てます。
左膝を曲げ、体の前に垂直になる姿勢をとります。上になった右脚は伸ばしたままの状態にします。
(2)頭・腰・足首が一直線になる姿勢をとります。
(3)(2)の状態のまま、右脚を上に挙げます
(1)~(3)を15~20回行います。
反対側の脚も同様にトレーニングします。1~2セット行います。
上記トレーニングを継続して行うことで体幹部が強化され、あなたの走りが「より推進力のあるランニング」へとレベルアップします。
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