「うちの子、すぐに転ぶ気がする」「姿勢が悪くて心配」「ゲームばかりで運動不足が深刻……」
現代の子育てにおいて、多くのお父さんお母さんが抱えるこうした悩み。公園に行っても遊具が減り、ボール遊びが禁止されている場所も多く、子どもたちが思い切り体を動かして基礎的な運動能力を育む機会は、昔に比べて激減しています。
高価なスポーツ教室に通わせたり、特別な器具を買ったりする前に、ぜひ目を向けていただきたい「最強のトレーニングツール」があります。それが、昔懐かしい「竹馬」です。
一見するとレトロな遊び道具ですが、実は竹馬には、現代のスポーツ科学の視点から見ても、子どもの運動神経を劇的に向上させる驚くべきメカニズムが秘められているのです。単なるバランス遊びではありません。体幹、協調性、集中力……あらゆるスポーツの基礎となる能力を、遊びながら総合的に鍛え上げることができます。
この記事では、なぜ今、竹馬が現代っ子に必要なのか、その科学的な効果を詳しく解説します。さらに、初心者でも必ず乗れるようになるステップ・バイ・ステップの遊び方、現代風にアレンジした楽しいゲーム、そして知っておくと少し自慢できる歴史トリビアまで、文字数たっぷりにお届けします。
さあ、埃をかぶっていた竹馬を引っ張り出すか、新しい一組を手に入れて、お子さんと一緒に「できた!」の喜びと、驚きの成長を体験してみませんか?
驚きの効果!竹馬で運動神経が劇的に伸びるメカニズム

「竹馬に乗れる子は運動神経が良い」と昔から言われてきましたが、これは単なる経験則ではありません。現代の視点で分析すると、竹馬は非常に高度で複合的なトレーニングであることがわかります。
竹馬が具体的にどのような能力を伸ばすのか、そのメカニズムをお伝えします。
1. 究極の「動的バランス能力」の養成
私たちは普段、平らな地面の上で無意識にバランスを取っています。しかし、竹馬の上は全く別世界です。足裏の接地面積はわずか数センチ四方の木の棒の上。しかも、その棒自体が常にグラグラと揺れ動いています。
この極めて不安定な状況で直立し、さらに前進するためには、「平衡感覚(三半規管など)」と「固有受容感覚(自分の体の位置や筋肉の状態を感じ取る感覚)」をフル稼働させる必要があります。
静止した状態でバランスを取るのとは異なり、動きの中で常に崩れそうになる姿勢を、コンマ数秒単位で微調整し続ける「動的バランス能力」が鍛えられます。この能力は、サッカーで相手と競り合いながらドリブルする、不安定な足場で転ばずに走るなど、あらゆるスポーツシーンで直結する最重要スキルです。
2. 無意識のうちに鍛えられる強靭な「体幹(コア)」
竹馬に乗っている子どもを観察してみてください。背筋がスッと伸びているはずです。猫背のままでは重心が安定せず、すぐに落ちてしまうからです。
不安定な高い位置で姿勢を保とうとするとき、私たちの体は無意識のうちに、腹筋、背筋、そして体の深層部にある「インナーマッスル」を総動員します。これがいわゆる「体幹(コア)」です。
ジムで辛い体幹トレーニングをしなくても、竹馬に乗って遊んでいるだけで、自然と天然のコルセットを身につけることができます。強い体幹は、良い姿勢の維持だけでなく、手足の力を効率よく発揮するための土台となり、走る速さや投げる力など、運動能力全体の底上げにつながります。
3. 脳と体を繋ぐ高度な「協調運動(コーディネーション)」
竹馬が他の遊びと決定的に違うのは、「手と足の動きを完全に連動させなければ一歩も進めない」という点です。
歩くためには、「右の手で右の竹竿を引き上げると同時に、右足を上げる」「その間、左手と左足で全体重を支える」という複雑な動作を、左右交互にリズミカルに行う必要があります。さらに目線は足元ではなく遠くを見なければなりません。
これは脳にとって非常に高度な情報処理タスクです。脳からの指令を、手・足・目といった別々の部位に同時に伝え、タイミングよく動かす。この「協調運動能力(コーディネーション能力)」は、リズム感や敏捷性にも関わり、スポーツの上達速度を左右する重要な鍵となります。竹馬は、この脳と体の神経回路を太くする最高のトレーニングなのです。
4. 「やり抜く力(グリット)」と集中力の向上
身体面だけではありません。竹馬はメンタルも強くします。
最初は誰でも怖いですし、何度も失敗して足をついてしまいます。「怖いけれど、もう一回やってみよう」「どうすれば落ちないかな」と試行錯誤し、高い集中力を維持して挑戦を続ける。
このプロセスを通じて、現代の子どもたちに必要とされる「グリット(やり抜く力)」や忍耐力、そして恐怖心に打ち勝つ勇気が育まれます。ついに乗れた時の達成感は、何物にも代えがたい自己肯定感につながるでしょう。
初心者も安心!基本の遊び方完全マスターガイド

竹馬の効果を理解したところで、いよいよ実践です。「難しそう」と敬遠されがちですが、正しい手順とちょっとしたコツさえ掴めば、多くの子が短時間で乗れるようになります。安全に楽しくマスターするためのステップを紹介します。
【準備編】安全第一!自分に合った竹馬と環境選び
- サイズの調整:
これが最も重要です。竹馬を体の前に立てたとき、握り手の棒が子どもの脇の下から肩の間くらいの高さに来るのが一般的です。高すぎると操作しづらく、低すぎると姿勢が悪くなります。 - 足乗せ台の高さ:
初心者は、地面から10cm〜15cm程度の低い位置から始めましょう。「落ちても怖くない高さ」が恐怖心を取り除き、上達を早めます。慣れてきたら徐々に高くしていきます。 - 服装と場所:
動きやすい服装と、滑りにくい運動靴が必須です(サンダルは厳禁)。場所は、転んでも大きな怪我をしにくい芝生や土の上が理想ですが、凸凹がない平らな場所を選んでください。アスファルトで行う場合は、ヘルメットやプロテクターの着用を強く推奨します。
【ステップ1】基本姿勢と「乗る」感覚を掴む
いきなり歩こうとしてはいけません。まずは「立つ」ことです。
補助者が竹馬を支えるか、壁に竹馬を立てかけた状態で練習します。
- 握り方: 竹竿は、体の「前」ではなく、両肩の「後ろ」に回して持ちます。親指と人差し指でしっかりと握り込み、残りの指で竿を支えるように持ちましょう。
- 乗り方: 片足ずつ、土踏まずの部分を足乗せ台にしっかり乗せます。この時、補助者は竹馬が動かないようにしっかりと上部を支えてあげてください。
- 姿勢の確認: 両足が乗ったら、視線を上げ、遠くの景色を見ます。背筋を伸ばし、お腹に少し力を入れます。「この高さの景色」に慣れることが第一歩です。
【ステップ2】最初の一歩を踏み出す「魔法のコツ」
立つことに慣れたら、補助者に支えてもらいながら少しずつ歩いてみましょう。ここで多くの初心者がつまずくポイントと、その解決策(魔法のコツ)を伝授します。
- 【最大のコツ】手と足は「セット」で動かす!
初心者は「足だけ」を上げようとして、足が台から離れてしまいがちです。
「右足を上げたいときは、同時に右手で竹竿を少し上に引き上げる」
「左足を上げたいときは、同時に左手で竹竿を少し上に引き上げる」
この「引き上げ」動作があることで、足乗せ台が足の裏にくっついてくる感覚が掴めます。これができれば、竹馬は半分マスターしたようなものです。
【ステップ3】補助なしでの独り立ちへ
補助者の支えを少しずつ軽くしていき、最終的には手を離します。最初は2〜3歩でバランスを崩すでしょう。それで構いません。「落ちそうになったら、すぐに足を地面につく」練習も同時に行うことで、恐怖心を減らします。
10歩程度安定して歩けるようになれば、もう卒業です。あとは自由に楽しみながら、自然とバランス感覚が磨かれていきます。
現代っ子も夢中!飽きずに楽しめるアレンジ遊び

せっかく竹馬に乗れるようになったのに、「ただ歩くだけ」では現代の子どもたちはすぐに飽きてしまいます。スマートフォンやゲーム機といった強力なライバルに対抗するためには、竹馬遊びにも「ゲーミフィケーション(ゲーム化)」の要素が必要です。運動能力をさらに高めつつ、夢中になって遊べるアレンジ方法を紹介します。
1. 競争要素を取り入れる「竹馬レース&タイムトライアル」
シンプルですが、競争は子どもたちのやる気に火をつけます。
- スプリントレース: 20メートル走など、短い距離で速さを競います。転ばずに速く走るためには高度なバランス制御が必要になります。
- カメさんレース(遅歩き競争): 逆に「いかにゆっくりゴールするか」を競います。これはスプリントよりも難しく、究極の体幹トレーニングになります。静止に近い状態でバランスを保つ必要があるため、プルプルと筋肉が喜ぶのがわかるでしょう。
2. 応用力を試す「竹馬障害物コース」
歩くことに慣れてきたら、コースに変化をつけます。公園にあるものを利用したり、簡単な道具を用意したりします。
- スラローム: ペットボトルやカラーコーンを等間隔に置き、その間をジグザグに歩きます。左右への体重移動と、細かい方向転換の技術が磨かれます。
- またぎ越しチャレンジ: 地面に置いたロープや、低い段差を「またいで」越えます。足をいつもより高く上げる必要があり、片足立ちのバランス能力が強化されます。
- (上級編)坂道・デコボコ道: ほんの少しの傾斜や、芝生のような不整地を歩くだけで、難易度は跳ね上がります。足首の柔軟性や、路面状況を瞬時に判断する能力が養われます。
3. 他のスポーツと融合!「マルチタスク遊び」
竹馬に乗りながら「他のこと」をすると、脳への負荷が高まり、協調運動能力が飛躍的に向上します。
- 竹馬キャッチボール: 柔らかいボールを使い、竹馬に乗ったまま短い距離でキャッチボールをします。「バランスを取りながら」「ボールを目で追い」「手で捕る」という、非常に高度なマルチタスクです。
- 竹馬サッカー(ドリブル): ビーチボールや風船のような軽くて柔らかいボールを、竹馬の足先でツンツンと蹴りながら進みます。足元の操作と全体のバランス維持を同時に行う、難易度の高い遊びです。
※これらのアレンジ遊びを行う際は、周囲の安全を十分に確認し、必ず大人の監督下で行ってください。
知っておきたい歴史解説:古来から続く「遊びと鍛錬」

最後に、竹馬の歴史について少し触れておきましょう。子どもたちが夢中になっているその道具には、実は長い歴史と深い意味が込められています。これを知ると、竹馬遊びが少し味わい深いものになるかもしれません。
遊びの起源は「神事」や「芸能」にあり?
竹馬のような道具の歴史は非常に古く、世界各地に存在します。紀元前の中国ではすでに、演劇や軽業(アクロバット)の道具として使われていた記録があります。日本においても、平安時代や鎌倉時代には、田植えの豊作を祈願する「田楽(でんがく)」という伝統芸能の中で、演者が竹馬のような高い足駄を履いて踊る「高足(たかあし)」が行われていました。
元々は単なる遊び道具ではなく、神様に捧げるパフォーマンスや、人々の目を引くための特別な技術として使われていたものが、次第に子どもたちの遊びへと変化していったと考えられています。
「竹馬の友」という言葉に込められた意味
「竹馬の友(ちくばのとも)」という言葉をご存知でしょうか。幼い頃からの親しい友人を指す故事成語です。
この言葉の由来は、中国の古い書物にあります。ある武将が、幼なじみの皇帝を敬う態度を見て、周囲の人々が「彼らは竹馬に乗って遊んでいた頃からの友人だから(それほど信頼関係が厚いのだ)」と称賛したという逸話から来ています。
ただし、この時代の中国で言う「竹馬」は、現在の私たちが想像する高い竹馬ではなく、切り取った竹を馬に見立ててまたがり、走り回る「ごっこ遊び」を指していたという説が有力です。
いずれにせよ、古来より「竹を使って共に遊ぶ」という行為は、子ども時代の純粋な友情や、共に成長していく姿の象徴であったと言えるでしょう。
昭和、そして現代へ受け継がれる価値
日本で現在のような形の竹馬が広く一般的に遊ばれるようになったのは、江戸時代以降、特に明治・大正・昭和初期にかけてと言われています。学校教育の中にも取り入れられ、体育の授業や運動会で竹馬が行われることもありました。
物が豊かではなかった時代、身近にある竹と木材だけで作れる竹馬は、子どもたちにとって最高のエンターテイメントであり、同時に知らず知らずのうちに足腰を鍛える鍛錬の場でもあったのです。
時代は変わり、遊びの選択肢は増えましたが、竹馬が持つ「体を操る楽しさ」「挑戦する心」「達成感」という本質的な価値は、何一つ変わっていません。デジタル全盛の今だからこそ、その価値はむしろ高まっていると言えるのではないでしょうか。
まとめ:竹馬で「できた!」の自信を未来へ繋ごう
竹馬は、現代の子どもたちが失いかけている「体を使った本能的な喜び」を取り戻させてくれる魔法の道具です。
動的バランス、体幹、協調性といった運動神経の基礎を劇的に向上させる効果はもちろんですが、それ以上に大切なのは、竹馬がもたらす「自信」です。
最初はグラグラして怖かった高い視点の世界。何度も失敗しながら、自分の体と対話し、コツを掴み、ついに一人で歩き出した瞬間の、あの子どもたちの輝くような笑顔。
「難しかったけれど、練習したらできた!」という強烈な成功体験は、運動だけでなく、勉強や将来の困難に立ち向かう際にも、必ずや彼らを支える大きな力となるはずです。
ぜひ、週末の公園で、あるいは庭先で、親子で竹馬に挑戦してみてください。お父さんお母さんも、久しぶりに乗ってみると、思った以上に体がなまっていて驚くかもしれません。親子で笑い合いながら、共に体を動かし、成長する。そんな素敵な時間を、竹馬はきっとプレゼントしてくれるでしょう。


コメント