筋肉トレーニングは中高年においても重要です。近年の研究では中高年であっても、筋肉トレーニングによって筋肉の機能が向上することがわかっています。しかし、正しい方法で行わないと体に負担がかかり逆効果となります。
中高年の方におすすめの身体機能向上に適したトレーニング方法を紹介します。
筋肥大よりも神経系の改善を目的とする
中高年ではボディビルダーのような筋骨隆々となるためのトレーニングは必要ありません。筋肉トレーニングをすることで脳―神経系の改善を第一の目的とします。筋力を維持し日常生活の質(QOL)を高めることを目的とします。
最大筋力の30%~60%の負荷で回数をたくさんこなすトレーニングがおすすめです。
トレーニングによって筋肉が収縮・伸長、その刺激が神経を通じて脳に伝わります。加齢にともなって、使われていなかった筋肉を復活させる効果があります。
筋肉の「共縮」を防ぐ
私たちが体を動かす場合、主導筋が力を発揮すると、その動きを助ける拮抗筋が抑制的に機能します。例えば、腕を曲げる際の主導筋は上腕二頭筋です。拮抗筋は上腕三頭筋となります。
力こぶをつくると、盛り上がった筋肉部分は収縮した上腕二頭筋です。拮抗筋である上腕三頭筋は伸張します。
「共縮」とは主導筋と拮抗筋が同時に収縮してしまうことをいいます。
力こぶをつくろうとした場合に「共縮」が起こると、拮抗筋である上腕三頭筋が収縮するので、腕を曲げようと思っても、主導筋である上腕二頭筋の働きを妨げます。
このように筋肉の「共縮」が生じると関節の動きが制限され、可動域が狭められます。
結果、体の柔軟性がそこなわれ怪我や故障をしやすくなります。
「共縮」を防ぐには主導筋と拮抗筋を交互にトレーニングするのがおすすめです。
中高年に推奨される筋肉のトレーニング法
スーパーセット法
主導筋のトレーニングと拮抗筋のトレーニングを組み合わせて連続して行う方法です。
例えば上腕部(上腕二頭筋・上腕三頭筋)をトレーニングする場合、
アームカール(ダンベルなどを持ち、肘を固定して腕をまげるトレーニング。主導筋は上腕二頭筋)
トライセプスエクステンション(ダンベルなどを持ち、肘を固定して腕を伸ばすトレーニング。主導筋は上腕三頭筋)
をセットで行うのがおすすめです。
初動負荷トレーニング
2005年文部科学省「学術フロンティア研究プロジェクト」に採択された「初動負荷理論及び初動負荷トレーニング(Beginning Movement Load Theory & Training)」理論に基づいたトレーニングです。
イチローや山本昌、岩瀬仁紀投手など一流のアスリートが取り入れていれたトレーニング方法として有名です。その効果は実証済みです。
中高年の脳-神経系の機能改善効果も期待できます。
筋肉を共縮せず、無理なく伸長しながら強化していくトレーニングで柔軟性を高め、関節の可動域が広がり、その結果、血行の流れが良くなります。
主にマシーンによるトレーニングなので、初心者でも正しい使い方を身に着けるのが容易です。
低負荷(最大筋力の30%~60%)で回数をたくさんこなすので体を痛める心配がありません。
まとめ
中高年での筋肉トレーニングは筋肥大よりも神経系の改善を目的とする。
筋肉の「共縮」を防ぐためトレーニング方法を組み合わせ実施する。
中高年に推奨される筋肉トレーニングとして初動負荷トレーニングがある。
《参考》
スポーツ生理学 根本 勇 山海堂
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