ある日突然、肩が痛くなり腕が上がらなくなった経験はありませんか?最初は激痛で腕が上がらなかったのですが、不思議な事に、痛みは月日が経つと自然と消えていきます。その痛みの正体と自然に痛みがなくなる理由と後遺症予防についてお伝えします。
五十肩は肩関節周囲炎のひとつ
五十肩は肩から腕にかけて痛みがあります。痛みが、突然生じて腕が上がらなくなり、腕の動きが制限されます。肩や上腕の違和感が長期間続く場合もあります。 肩関節周囲の炎症は加齢が主な原因の他、さまざまな原因で引き起こされます。 五十肩はこうした肩関節周囲炎と総称される症状のひとつです。
痛みの正体
肩関節の周囲に炎症が起こることで痛みが生じます。
腱板の炎症
上腕骨と筋肉(棘上筋 きょくじょうきん)を連結するのが「腱板」です。 腱板はコラーゲン繊維でつくられています。これは加齢とともにもろくなり、修復しにくい性質を持っています。 また、棘上筋の腱板は肩峰とぶつかりやすい構造になっています。老化現象や衝突を繰り返すことで腱板は炎症を起こし痛みを発生させます。
関節内の膜が剥がれて炎症を起こしている(ガッテン説)
2017年12月13日放送 「ためしてガッテン 五十肩の痛みの正体」によると痛みの正体は「関節内の膜が剥がれて、その炎症による神経への刺激」と説明されています。 藤井克之教授(東京慈恵会医科大学 整形外科学)が研究された画像からは 「老化による筋肉(棘上筋)の衰えは骨の動き方のバランスをくずし」 「関節のまわりに炎症をおこす」 「神経を刺激し炎症を発生させる」メカニズムがあり、 内視鏡の画像により番組内では関節内の膜が剥がれて炎症が起きていることが確認されています。
3つの病期をたどる
五十肩は痛みの症状で三段階に分類できます。
急性期 2週間~2ヶ月
安静が第一。痛みがひどい場合、医師の診察を仰ぐ。消炎鎮痛剤の服用や痛み止めの注射を行う。
慢性期 2~4ヶ月
痛みがやわらぐ時期。しかし動かすと痛い。特定の方向への動きの制限がある。
回復期 3~6ヶ月
痛みがなくなってくる時期。 *期間については個人差があります。
自然に痛みがなくなる理由
腱板や関節内の炎症は組織の損傷によるものです。損傷した部位を修復する働きが人間には備わっています。(自然治癒力) 損傷部位には血液が大量に運ばれます。損傷した部位にある壊死細胞を血流量の増加により除去するためです。血流量の増加により損傷部位は熱を持ち赤くなり腫れます。そして痛みを持ちます。 こうした血流量の増加による「熱感(ねつかん)」→「発赤(はっせき)」→「腫脹(しゅちょう)」→「疼痛(とうつう)」を炎症反応といいます。 炎症反応は人間に備わった自然治癒力が発揮されれば一定期間を経て収まります。 五十肩における急性期→慢性期→回復期とは、人間の体に備わった自然治癒力が発揮されるための期間なのです。
怖いのは後遺症
五十肩で怖いのは回復期に痛みがなくなり、完治したと勘違いすることです。 “イギリスの論文によると、五十肩の患者さんを3年以上追跡調査した結果、3年以上経過してもまだ関節の動きが正常化していない人が、4%とも20%ともいわれているデータがあります” (NHKきょうの健康ブック 五十肩より) 関節の動きが正常化しないままに適切な運動療法を行わないでいると患部滑液が線維化します。線維化とは液状であった滑液が固まって「のり状」になることです。線維化によって癒着し、関節の固定化が進みます。 癒着による関節の固定化は腕の可動域を狭めてしまいます。 肩関節の定期的な運動が機能を長期にわたり正常にします。
急性期から運動療法を行うことで癒着を防ぐ
五十肩を発症し炎症による痛みが自然になくなるまで7~12ヶ月かかります。(個人差はあります。)この期間に患部を動かさない状態が続くと癒着が起きます。患部の癒着を防ぐ運動療法を紹介します。
コッドマン体操(振り子運動)
アメリカの医師コッドマンが考案した体操です。前傾姿勢になって手に重りをもち、前後左右に腕を振り子のように動かします。 前傾姿勢により、重力の作用で腕が引き下げられます。さらに手に重りを持つことで肩関節の隙間が広がり運動時の痛みを軽減します。
★前後に振る方法(10往復 1セット)
1.固定された台(机など)に痛くない側の手を添える。 2.患部側の手にアイロン(1~2kgの重量物)を持ち前傾姿勢をとる。 3.患部側の手をゆっくりと前後に動かす。(振る)
★左右に振る方法(10往復 1セット)
1.2.は前後に振る方法と同じ。 3.患部側の手をゆっくりと左右に動かす(振る) 前後・左右を10回 1セットで毎日行うことで癒着を防ぐことができます。 *痛みがある場合は無理をしてはいけません。徐々に動かせる範囲を大きくして下さい。
まとめ
五十肩は肩関節周囲炎のひとつの症状である。
肩関節の腱板は加齢により損傷しやすくなる。
五十肩は急性期・慢性期・回復期を経て自然に痛みがなくなる。
炎症は人間が備えている自然治癒力により治まる。
痛みがなくなっても完治したと安心してはならない。
急性期からコッドマン体操を行うことで関節の癒着を防ぐことができる。
参考文献 肩が痛い、腕があがらない (NHKきょうの健康ブック 五十肩 監修 加藤文雄 NHK出版編) [1] Shaffer B, et al. Frozen shoulder. A long-term follow-up., J Bone Joint Surg Am. 1992; 74(5): 738-746

