「ビー玉」のことを、昔の広島の子供たちが「らむねっちん」と呼んでいたのをご存じですか?
懐かしい響きですよね。
私が子供だった昭和の時代、学校が終わるとランドセルを放り投げ、「らむねっちん」を詰め込んだ袋を持って、一目散に駄菓子屋の路地裏へ走ったものです。
そこで繰り広げられたのは、単なる子供の遊びを超えた、熱いドラマでした。
今回は、学校で「禁止令」が出るほど熱中したあの頃の遊びと、私たちの「社交場」だった駄菓子屋の記憶を書き残しておこうと思います。
「あーなー」と「だーしー」~独特の呼び名とルール~
広島のビー玉遊び(らむねっちん)には、大きく分けて2つの種類がありました。
1. 「あーなー」(天大・穴入れ)
名前の通り、地面に掘った「穴」を順番に狙っていくゲームです。
これは純粋な技術戦で、ビー玉の取り合い(賭け)はありませんでした。
いかに速く上がり、特権である「連続プレイ権」を得るか。
そしてライバルを遠くへ弾き飛ばして邪魔をするか……。まるでゴルフやレースのような面白さがありました。
2. 「だーしー」(出し)
地面に描いた枠から、相手の玉をはじき出すゲームです。
こっちは真剣勝負、いわゆるギャンブルです。枠の外に出した玉は、その場ですぐに自分のポケットに入れて「ゲット」できました(即時獲得ルール)。
ルールは厳格に「同サイズ限定」。
手に汗握る「実利を求めたゲーム」でした。
こだわりの「手のひら上向き打法」
私は「あーなー」が得意でしたが、逆にパワーが必要な「だーしー」は苦手でした。
なぜなら、私には独自の「あーなー」攻略フォームがあったからです。
それは、「手のひら上向き打法」。
通常は手の甲を上にしますが、私は手のひらを上に向け、手首を浮かせて構えます。
こうすることで、地面の凸凹や摩擦を無視して、空中の放物線で距離を稼ぐことができるのです。
遠く離れた場所から、直接「あーなー」を狙う長距離砲(ロングレンジ)。
無駄な力を使わず、スマートに穴へ「ズドン!」と放り込む。
それが私の自慢のスタイルでした。
学校での「禁止令」と、路地裏の「社交場」
あまりに熱中しすぎて、ついに学校では「らむねっちん禁止令」が発令されました。
休み時間のたびにグラウンドの隅に集まり、ビー玉を賭けて熱狂していたのが先生に見つかったのでしょう。
行き場を失った私たちが集まったのは、駄菓子屋の横にある未舗装の路地裏でした。
そこは、学校の先生も介入できない、異なった年齢の子どもたちが集まる、私たちだけの「社交場」でした。
舌で味わう昭和の味「ねぶりくじ」とチクロ
遊び疲れた後の楽しみは、やっぱり駄菓子屋です。
そこには「昭和の味」が溢れていました。
特に印象深いのが「ねぶりくじ」。
これは紙のくじなのですが、その名の通り「舌でねぶる(舐める)」と、ジワ~っと「1等」や「スカ」といった文字が浮き出てくる仕組みなんです。
壁に貼られた豪華な景品を見上げながら、必死で紙を舐めたあの光景……今では考えられませんが、当時は当たり前の儀式でした。
残念賞は、紙に入った数粒の甘納豆。
その他にも、チクロ(人工甘味料)入りの甘いお菓子や粉ジュース、アイスキャンデーなど、そこは何でも揃う「みんなの社交場」でした。
土埃の匂い、ビー玉がぶつかる硬い音、そして甘納豆の素朴な味。
路地裏で放ったあの一撃の快感は、今でも私の記憶の中で色褪せることのない宝物です。

